YKKの町、富山県黒部へ ~干しカレイの町~
ある会員の方から、富山にいるなら、黒部市にあるYKKの史料館に、日本機械遺産学会が認定した機械遺産「ファスナーチェーンマシン(YKK-CM6)」があるので、見てきたらどう、との連絡をいただき、先日、行ってきました。
そこは「あいの風とやま鉄道」(元・JR北陸線)の生地(いくじ)駅から歩15分ほどの所にある「YKKセンターパーク」です。
「YKKセンターパーク」という広々とした敷地にあるこの建物は、1958(昭和33)年に建てられたファスナーの基布紡績工場でした。
その工場が役割を終えた後、取り壊さずに資料館として再生しました。
2010年に「BELCA賞ベストリフォーム部門賞」を受賞しています。歴史的建造物を改造して、後世に引き継いだことが高く評価されました。
なお、横浜赤レンガ倉庫なども、この賞を受賞しています。
さて、展示室ですが、写真撮影は禁止でした。機械遺産に認定されたそのファスナーも展示されていましたが、撮ることはできませんでした。
同社は、1994年に「YKK」と社名変更するまで「吉田工業」でした。創業者は故・吉田忠雄、PR施設があるこの場所は黒部市吉田という町名です。
ファスナー事業で積極的に海外展開し、現在は72カ国・地域で事業をしています。
地味で保守的な県として知られる富山では珍しい““インターナショナル企業“です。展示説明は、英語が先で、日本語はその下にありました。なんともオシャレ!です。
例えば、次のように。
「Longer Fiber Suits Zipper Yarn」の英文の下に「ファスナー用の糸には長い繊維が必要です」と。
「We Make All Dies Ourselves」「あらゆる金型を自社でつくる」といった感じで。
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ファスナーは1893年に米国で発明されたのですが、用途として最も厳しい条件が求められたジーンズ用で米国製品を凌駕するものを開発したことで、YKKはファスナーで世界1になるきっかけをつかんだそうです。
展示館の敷地の一角はビオトープになっていて、カエルの卵などが見えました。初夏になるとヘビも出るそうです。
池を覗くと、クルミがいくつも落ちていました。
クルミは黒部市ではごく普通に見られるそうです。果実が熟すると黒くなるので、
クルミのことを地元の方言で「くろべ」といい、その名が地名の黒部となったようです。
センターパークから日本海に向け約1.5キロ歩くと黒部漁港に着きます。
漁港に隣接して魚の駅「生地(いくじ)」があります。海産物を扱う市場になっています。
そこで見かけたのが「カレイのほっぺ」です。説明文を読んでみてください。
この黄色い説明紙の下の冷凍ケースにその「ほっぺ」はありました。確か6個入りのコブクロで650円程度でした。
店内にはいろんなカレイが並び、私は、長さ30センチ弱のアカガレイの一夜干しを2匹買いました。帰宅して焼いて食べたのですが、うーん、なかなか美味でした。
上のアカカレイは結構大きい方です。
海岸通りの魚店の店先にカレイが干してありました。黒いのは鳥よけです。
産業遺産に関心を持って旅に出ることと、「食」とは、密な関係にあると常々思っていますので敢え魚等を紹介しているのですが、ここ生地(いくじ)という所は、詩人の田中冬二の郷里でもあります。その詩は教科書にもよく載っています。
その故郷である生地での詩「ふるさとにて」の中に、「ほしがれひをやくにほひがする」の句もあります。
産業史に戻りますが、田中冬二の母方の祖母は安田善次郎の妹です。そういう血縁もあり、冬二は安田銀行(後の富士銀行)に就職します。
以上です。 (K.O)